胎児性アルコール症候群とは


胎児性アルコール症候群 (Fetal Alcohol Syndrome) とは、赤ちゃんがまだ母胎にいる間に母親のアルコール摂取によって引き起こされる神経系脳障害の一種です。

妊婦のアルコール摂取量とその摂取頻度により、生まれてくる子どもに軽度から重度に及ぶあらゆる知能障害が顕れることがあります。

胎児性アルコール症候群の症状には、
形態異常など外見的に明らかなものや、脳性小児麻痺、てんかん、学習障害などがありますが、特に身体的異常が見られない場合でも 重度の行動障害が見られることがあります。


三つの特徴


FASには大きく分けて三つの特徴があります:

1) 中枢神経系の異常 ※「FASの特徴」のページ参照
   過小あるいは過剰行動(多動)や学習障害など。
2) 発育不全(低体重や小さい体)
   母胎にいる時から、健常児よりも5〜10%ほど身体が小さく、低体重である。

3) 下記のような特徴のある容貌
  1. 黒目(瞳孔)部分しか開かない、短い眼瞼亀裂。両眼間隔の長さで目全体の長さを割った数値が、アジア人と一部のアメリカインディアンは80%以下、ほとんどの白人と黒人は90%〜95%以下になるはずですが、この数字が小さければ小さいほどFASの特徴であると考えてよいでしょう。

  2. 人中、または鼻と上唇の間が長く、縦溝がない。

  3. 上唇のラインが真っ直ぐで、上唇が薄い。

  4. 小頭症。頭の鉢回りが通常児の5%ほど短い。簡単なチェック法は、顔の中央と思われるところにまず横線を引き、両目がそのライン上にあれば正常です。もし、お子さんの両目の位置がそのラインより上側(おでこより)にある場合は、小頭症の可能性があるので医師に測定してもらうことをお勧めします。


その他の特徴
  • 内眼角贅皮(蒙古ひだとも呼ばれ、アジア人や一部のアメリカインディアンに見られる上瞼のたるみ)。ただし、FAS児の場合は贅皮がもっと極端である。

  • 鼻梁のほとんど見られない、小さく短い鼻。

  • 小顎症、または尖った顎(あご)先、小さい下顎。(成長するにつれ、歯が押し合うことになり、噛み合わせが悪くなる。また、成長期に下顎が大きくなりすぎることもある。)

  • 耳の形態異常。耳が後ろに反り返り、普通より低い位置にあり、耳介の凹凸が通常のものとは逆になっている。(Railroad track ear)

また、頻度は減りますが、不格好で不正咬合(噛み合わせの悪い)歯、乳児の異常に量の多い顔毛と体毛、水掻きのある指、屈曲した小指、小さい爪、両掌に走る一本の太い線、湾曲した背骨、脊柱の一番下の付け根にできる窪み、身体の方ではなく前方を向いている両掌、関節異常、血管腫または皮膚の紫色のあざ等も希に見られることがあります。こういった症状を持つ子供は、斜視や近視、難聴を患ったり、耳の病気にかかりやすく、心臓に欠陥が見られる場合もあります。


注意
ここに挙げた症状や傾向の一つや二つは健常な人々にも見られますし、他のFASの徴候と切り離してみると何ら問題のないことのように思われます。
しかし、もし上記のようなFASの症状が複数重なり、 それに行動障害が伴う場合には、神経学、ディスモフォロジー(形態異常学)、または遺伝学分野の専門家に相談されることをお勧めします。


*ほとんどのFAS児は『不完全型の胎児性アルコール症候群
胎児性アルコール作用: FAE)』を患っているケースが多いです。その場合、身体的な特徴が極端な形で現れることはまれで、大体において『行動障害』が主に見られますので、ここに書かれている身体的特徴がないからと言って『FAS児ではない』という安易な判断を下すべきではありません

一般の小児科医はFASの診断を下すための
教育を受けていないのが通例です。



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