日本におけるFASの状況 その未来

アメリカやカナダでは、少なくともこのFAS問題はすでに広く認識されており、記憶力の増幅、周囲からの刺激の軽減、子供たちのフラストレーションへの理解と対応などの初期介入療育の政策はすでに取れられいます。

しかし日本人にとって、胎児性アルコール症候群(FAS)はまだまだ現実のものではないようです。
日本政府は、妊婦に対する警告はおろか、アルコール飲料の缶やボトルに「健康を害する恐れがある」といった注意書きの表示さえも未だに義務付けていません。
2004年5月以降、ビール酒造組合、日本洋酒酒造組合、日本蒸留酒酒造組合、日本酒造組合中央会などが、「妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがありますので、気をつけましょう」といった文面をアルコール商品に表示する意向を示しました。


日本人女性のアルコール常飲者の割合は、アメリカ人女性の66%に対し61%で、アメリカ人女性の死者数10万人中5人がアルコール関連の死であるのに対して、日本人女性のそれは10万人に4、3人と非常に近い数値となっています。しかし、1万人に9、7人の割合で胎児性アルコール症候群の児がアメリカでは生まれていますが、日本では(現在までに)総数56例が報告されているに過ぎません。そしてこの数字は、
実際はもっと多いと考えて間違いないでしょう。

若い女性の間では、飲酒の低年齢化が進み、子供を産む年齢に達する女性のワインやビール等のアルコール飲料消費量も年々増えています。

飲酒の理由は個人的なものから社交上のもの、気分的なものなど色々でしょうが、アルコールが若い日本人女性の生活の一部になりつつある事は確かです。しかし、たとえアルコール依存症など飲酒関連の問題を抱えるようになっても、そういった人々への援助やサポートを提供する組織や団体はまだまだ数少ないのが現状です。

アルコール依存症やアルコール乱用は、医者からの医療と精神療法の治療だけでなく、周囲からの理解と援助を必要とする神経系依存症の病気であるにもかかわらず、未だに個人レベルの問題として扱われる傾向にあるのです。

胎児性アルコール症候群(FAS)のような先天性の病気は(大多数は遺伝的なものですが)他にもあり、それらも慎重に診査かつ考慮されるべきです。けれども、
親となる人間が、受胎前、妊娠中、授乳中に飲酒し続ける限り、胎児性アルコール症候群(FAS)を病む子供が産まれるリスクは決して無くなりはしないのです


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