FAS児の特徴 − 特徴と傾向

<IQ(知能指数)と学習障害>

  1. FAS児のIQ(知能指数)は、40〜130と一定ではありません。重度の学習障害を負う子もいれば、ほとんど学習障害の見られない子もいます。字を覚えるのが得意だったり、文字のきれいな子も多くいるでしょう。

  2. ほとんどのFAS児の学習面における最大の問題点は、国語(読み書き)でなく、 数学(算数)の分野にあるようです。これは、数学が抽象的な思考を必要とするからです。早い時期では、算数で掛け算を習い始める頃になると、突然成績が横ばいになるようです。

  3. その他の学習問題としては、連続的な指示や一度にたくさんの指示に従えなかったり、学校という環境において、光や音、他の人との接触などに対して極端に過敏であったり、鈍感であったりすることなどが挙げられます。



<視覚・聴覚・記憶力>
  1. FAS児は、視覚や聴覚、記憶力などに問題があることがあります。私達にとって何でもない音が、FAS児には不快で混乱を招くような、甲高くて調子外れな、耳障りな音に聞こえたりするのです。

  2. 視覚は、近視であったり、視界の一部しか見えていない場合もあります。
    記憶にもむらがあり、覚えたことを一週間で忘れたかと思えば、一月後にまた思い出すといった具合なので、FAS児は『怠け者』だとか『努力が足りない』等と思われがちです。



<行動障害>

  1. 行動障害は、物覚えが悪いといった単純なものから、善悪の区別が付かなかったり、苛立ちや怒りの表現に問題があるなど多岐に渡り、そういった行動の多くは、学校や周囲との関係の問題に関わっています。

  2. 特に抽象的な思考を必要とする学習や、一度に多くの段階を踏まなければならない行動などは、FAS児の理解できる範疇を超えてしまう場合があります。与えられた指示を口で復唱することはできても、その指示通りに行動することは不可能かもしれません。

写真を使ったり実際に演じることによって、一つ一つの情報を視覚的に伝えてあげることがFAS児には必要なのです。また、学校での挫折や日中の過度な刺激は、怒りやフラストレーションの原因にもなり易いです。



<理解力と罰>

一般通念的に理解されている言葉やジェスチャー、目配せ等の合図を認識できないFAS児にとって、周りとの付き合いは容易ではありません。立っている時や会話をしている時に相手に極端に近づき過ぎたり、話の流れについていけなかったり、周りの人のすることを後先考えずにすぐ真似てしまったりする傾向があるのです。友達を作ることはできても、その友人との関係を保つことのできない場合が多いようです。

FAS児にいくら罰を与えても無駄です。「罰を受ける結果になったその行為をまた繰り返せば再度罰を受けるのだ」、ということを理解し得るほど先々のことをFAS児は考えられないのです。

視覚や実施,行動によってしか物事を認識しえない子供に、いくら口で説教をしたり説明したりしても何の意味もありません。こういった素行問題が見られる子供のことを、『頑固である』とか『言う事を聞かない子だ』と思われるでしょうが、実際は口頭による指示の理解に手間取っていたり、過刺激のせいで混乱していたり、記憶力が不十分なせいで、指示に従いたくてもそれができずにいるのです。



上記のようなFAS児の状態を理解しないまま罰を与えても、子供はなぜ罰せられるのか解らないでしょうし、多くの感覚障害や記憶に問題のある事を本人が自覚できずにいたり、知っていてもそれを説明できるほどには自分の問題を理解できずにいる子供達にとって、罰は単に子供のフラストレーションを助長する原因にしかなり得ません。


FAS研究の第一人者であるAnn P. Streissguth博士は、「胎児性アルコール症候群を病む人の典型的な特徴は、分別の無さや、自分の行動の結果を理解する能力の欠如にある」としています。これは顔や身体に形態異常が見られない場合も同様です。


人はたいていの場合、「こうしたら、こうなる」というシミュレーションを無意識にしているものです。そうした時に、過去に起こった事柄や経験から先に起こる事を予想し、同じ間違いを犯さないようにと次にとる行動を制御したり、別な方法を探したりします。
しかし、胎児性アルコール症候群を患う子供たち(大人も同様)は、そういったシミュレーションや抽象的な考えを不得意とするので、『後先考えずに行動する』と思われます。


子供の素行に問題が見られる場合、その子の母親に妊娠前、妊娠中または授乳中にアルコール乱用やアルコール依存症などの問題が無かったか調べる事をお勧めします。



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